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In order to acquire The key of Eden in that hand

novel

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プロローグ

2012/04/15

とある寮の部屋の片隅で、目覚まし時計のアラームが鳴り響いた。電子音は部屋を支配していく。
アラームが暫く鳴り響いた後、女の手は時計のボタンを押さえ、ようやくアラームは終止符を打った。
外では鳥がさえずり、時計を見て起きなければ、と思い女はようやく起き上がった。
カーテンを開ける。射し込む光はまばゆく、射し込む光が部屋を白く染め、女のブロンドの長髪は瞬いた。
そしてすぐさまクローゼットに向かい、着慣れた軍服に袖を通す。ポケットにはスマートフォンを滑り込ませる。
かれこれ十二年近くこの軍服に身を包んで来たのか、この軍服は何着目だっただろうか、と女――ユリス・ウェンキッドは考えた。
軍服に身を包み、自室のドアを開けて、ユリスは食堂へと歩みを進めた。朝、食堂へ歩みを進めるのは軍人になっても毎日の習慣となっている。長身の彼女の体に、朝食抜きというのは苦しいものである。
食堂へ入り、彼女はトーストとスクランブルエッグをトレーに入れて運び、席についた。
「いただきます」
と言ってから、いつものようにモーニングを口に運ぶ。卵は、口に入れた瞬間とろりととろけ、トーストを齧ればバターの良い香りが鼻腔を満たした。
「ごちそうさまでした」
と言ってトレーを返却してから、膝下まである外套をなびかせながら廊下を歩いた。





暫く歩いて自室に戻ろうとしたとき、自室のドアが開いているのをユリスは見た。誰かが部屋に入っているのだろうか――と思って自室に近寄ってみると、何やら楽しげな声が聞こえて来た。
「ぺーたぺたぺたぺったぺたー テープぺたぺたぺったぺたー」
ユリスが部屋の前に駆け寄ると、彼女の机にテープを貼り続ける青年がいた。どうやら彼は市販のテープを貼らずに、異能の力で出来たテープを貼っているようだ。
「ラグスさん、こんなに大量のテープは使い切れませんよ?」
とユリスはテープを貼っているラグスに言った。
「だってキミ…、いっぱいテープがいりそうだったから…いっぱいテープ出してみたんだけど…」
と気だるそうに言いながらラグスは残りのテープを貼った。机の四隅は数センチにカットされたテープに包囲されていた。彼なりの気配りだろうか。
「ラグスさん、その異能を使いすぎると疲れるのはあなたが一番理解しているはずです。少しそこのベッドで寝ていてください。寝れば少しは疲れも取れるでしょうから…」
「はーい」
そう言ってラグスは机の隣にあるベッドへ飛び込んだ。少しすると、ラグスの寝息が聞こえた。ユリスはふぅとため息をつき、机に山積みにされた書類と睨み合い、見回り中に住人の行動を知る為に撮った大量の写真を、彼女が生活ノートと呼んでいるノートに貼付けていった。ラグスのテープはぴったりと紙に張り付いた。
そして一通り作業を終えた所で携帯が鳴った。だが鳴ったのは枕元にあるラグスの携帯であった。だが彼は全く起きる気配がしない。
それに加えて液晶には「グラーク元帥」の文字が表示されていた。ユリスは事の重要さを案じ、急いでラグスの携帯を取りボタンを押した。
「申し訳ございませんがラグスはただいま席を外しております。もし宜しければ、用件をお伺いさせていただきますが」
「ユリス・ウェンキッドか。ラグスを連れて一緒に来い。場所は分かるな」
「かしこまりました」
「ああ、なるべく早く来い」
そういって電話は切れた。ユリスはラグスを荒っぽく起こして、元帥の元へと急いだ。





「おお、来たか」
迫力のある声で元帥は二人を迎えた。
「ラグスがお前の近くに居るようだったからな。ついでに二人に来てもらう事にした」
やはり少し距離が離れているとしても、正面に居るのは歩く処刑台と呼ばれる男。二人の心はより引き締まっていく。
「用件は何でしょうか。元帥が直々に伝える事は、重要な事だと思っていますが」
ユリスはそう言った。すると意外な答えが返ってきた。
「お前達にゲームに参加してほしいのだ、エデンの鍵というゲームに」
エデンの鍵。外も中も分からないゲームにどうして参加するのかと、ユリスは再び問おうとしたが、ラグスに遮られた。
「なんで?どうしてそのゲームに出るの?ボクにはわからないや」
「このゲームに勝てば、シエル・ロアを統治する事が出来る――つまり秩序ある世界を実現する事が出来るから参加するのだ」
ラグスは怪訝そうな顔をした。さらに元帥は続ける。
「それには、強い者を集めることが必須だ――星を集めて、星を奪われても奪い返すような人材がな。だからここに来てもらったのだ」
「星というものは何なのですか、星を集めるとは――」
本当に話が読めなくなってきたので、ユリスは話を遮った。
「じきに説明をしよう。とにかく、このゲームに参加してくれるな?」
ラグスはずっと怪訝な顔をしていた。ユリスは一呼吸をして、こう答えた。
「かしこまりました。元帥がそう言うのであれば、私は軍人として、与えられた仕事をするまでです」
ラグスも答えた。
「そういうことならボクもやるよ。元帥さん」
「期待しているぞ」
そして二人は部屋を出た。ふとスマートフォンを見ると、新着メッセージが一通受信されていた。




こうしてユリスは、ゲームに参加する事を決意した。これから待ち受ける運命と、宿命の戦いが待ち受ける事を知らずに――
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肉を喰らう【プロローグ】

2012/04/18

人々の話し声でにぎわい、耳を澄ませば豪快な笑い声や様々な声が耳に入ってくる。
外からは食べ物の良いにおいと、暖かい電灯。それだけでなぜか立ち寄りたくなる――そんな雰囲気を醸し出している。
そこはギルドが運営している、一般市民にも開放されている食堂である。
その食堂の中のカウンター席に、一人座っている赤毛の青年が居た。



「フォル、ステーキと、サラダ一つずつ食べたいんだけど、大丈夫かな?」
青年はいつもより寂しく水色の髪をした少女に話しかけた。
「あっ、チノさん…その…今作ります!」
チノ――と呼ばれた青年の声に、フォルと呼ばれた少女は急いで調理を進める。
「フォル、あんまり急がなくていいよ。キミさ、さっきも焦って料理がヤバいことになったろ」
その事実を示すかのように、一つのフライパンの中に、黒い物体がぶすぶすとくすぶっていた。
「あのっ、それは私がタイマーの設定を間違えたからで…その…本当にっ…ごめんなさい!」
「オレに謝る必要なんてないって。ほら、サラダにいっぱいドレッシング掛かってる」
カウンターテーブルには、これでもかとあらゆる類の調味料を掛けたサラダが出されていた。
「わわっ、ごめんなさいぃっ!!!」
フェリクは我に返って調味料ジャンキー御用達のサラダを見て、謝った。
「いいって、いいって。オレはそんなに気にしてないから大丈夫だよ。フォルが悲しい顔をしてると、オレまで悲しくなっちまう。だから明るく、な?」
チノはサラダに手を伸ばす。口にしたとたんに、調味料達が味の主張をし合う。チノは不味いというよりもむしろ美味しそうな顔をしてしばらく調味料を口にし続けた。
「あっ、で…でもステーキは…その、おいしくできましたよ!」
テーブルに出されたのはステーキ。肉汁のしたたる、ミディアムレアに仕上がっていた。チノはそれを見るや、ナイフで肉をざっくりと切った。そして切った肉を、豪快に食べる。
「その…料理、おいしいですか?」
フェリクは訊いた。チノは肉を飲み込み、こう言った。
「もちろん。もう食べちまったよ。ごちそうさま」
チノは口をナプキンで拭いながら言った。テーブルには食後のお茶が置かれていた。フェリクの計らい、だろうか。




チノはお茶を飲み、食事代を払うコインを用意しようと右ポケットを探った――。
のだが、ポケットの中にはサイコロと少しの飴しか入っていなかった。念のため左ポケットも探ったが、そこには冷たい鉛――大量の弾丸が入っていた。
どうしようかと思案するついでに銃の手入れをする。今日は銃を使っていないのだが、念には念を入れて手入れをした。だがコインが出てくる筈もなく、ゴーグルを装着した――が、そこに出るのは異能の情報ばかり。にぎやかで人の多い場所だったので、すぐにゴーグルが曇ってしまった。
「はー…どうするかなぁ…オレ」
チノはぼそりと呟いた。
「あぁ…そうだった、今日の分のコインはあの子に全部使ったんだった……」
ふと今日に奢った女性の事を思い出した。チノの顔が寂しくなって下を向く。
「あの…チノさん?今日は…その、ツケで大丈夫ですよ?」
フェリクの言葉に驚いた。まさかさっきの呟きが聞こえていたのか、とチノは思った。
「え…フォル、いいのか?」
チノは言った。
「いっ…いいんです!そのかわり、次来た時は、まっ、まとめて払ってくださいね」
「ああ、わかったフォル。ありがとな」
彼はそう言って、外へ出るドアを開けた。




チノは食堂の外へ出た。外は暗く、星が少し見えた。
彼はふと携帯電話を覗く。新着メッセージが一件、届いていた。
「こんな時間にメール?誰なんだ…?」
メッセージを見る。見知らぬメールアドレスに、”ゲーム参加おめでとう”という文字が浮き出た。新手の詐欺かと思ったが、本文を見るとどうやら詐欺ではないようだった。
「ゲーム…ピアチェ………エデンの…鍵……? …なんだこのメール、詐欺にしか見えない…な」
彼はそう思った。が、彼にはそのメッセージを消す事が出来なかった。
「もし詐欺じゃなかったら、どうしようもねえよなぁ…それに、ゲームには勝たねえとな」
彼は携帯をしまい、飴を口に放り込む。
「それにしても、『醜く勝利に執着する様』……か、人間って、大抵そんなもんだと思うけどな…」
そうして彼は、夜の街をまた歩き出すのだった。

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旅の小休止【プロローグ】

2012/04/19

「はー…暑いなぁ…」
少女は空を見上げて呟いた。
前方を見ると街道が広がり、ゆるやかな坂道の先には街——シエル・ロアという街——が広がっていた。丘に行けば、その街の景色が広がり、まるで街の全景が確認出来る程だった。
「本当はこんなに早く戻ってくる予定はなかったんだけどなぁ…まさかこんなに早く戻る事になるなんて」
彼女は街道を歩いていった。長い間歩いていたせいか、靴はところどころすり切れていた。




彼女の名はセシル・ウェンキッド。生まれも育ちもシエル・ロアであった。
彼女は軍の士官学校を退学し、3、4年前から流浪の旅を続けてきた。
出会いと別れは数知れず、出会い倒した魔物も数知れず。野原や森で過ごしてきた夜は幾星霜——。
時にはあらぬ疑いをかけられる事もあり、遺跡の片隅や森の奥で野宿をする事も多々あった。
魔物を倒した金で武器商人から鎖で繋がれている二本のナイフを買った事も一回あった。
彼女は街道を歩きながら、今までの旅を振り返りながら無心で歩みを進めていた。
「思えば旅をして色々とあったなぁ…旅なんてしなきゃ、こんな武器を持つ事も、貴重な経験をする事もなかったんだ…」
彼女は草むらに座り一人、武器を手に取る。刀身が赤いスティレットに、蒼いククリ。赤と蒼、形状との対比。まじまじと見つめると不気味なものである。まるでナイフが自分を見ているかのように、ナイフはきらめいた。
彼女は4年前の事を思い返していた。軍の士官学校に在学していた時の頃、異能が目覚めてから初めての実戦演習の事を——



まどろみの中で、一人の男の声が聞こえた。
「そこの貴女。そこで何をしているのですか」
彼女は目を開けた。彼女の瞳にはハープを持った、男性か女性か分からない赤髪の人物が映っていた。
「うわっ!? ……びっくりした…」
彼女は驚いた。まさか、こんな街道に人が通ってくるとは。
「貴女はセシル・ウェンキッドさん…ですね? 私の名前はオメテオトルです。貴女が眠っているのでついつい話掛けてしまいました」
彼女はオメテオトルを見る。どうやら少年少女、という訳では無さそうだった。歳は二十歳を越えているように見えた。
彼女は半ばねぼけた声で問った。
「オメテオ…トル…さん、どうしてここに…?」
「貴女が旅人に見えたので、旅人同士、色々とお話をしようと思ったのですよ」
彼女は一気に目が覚めた。どうしてすぐにセシルが旅人だと分かるのか——。彼のその瞳は、まるで彼女の生い立ちを見透しているかのようにセシルを見ていた。




オメテオトルとセシルは長い間話をしていた。
旅の話や戦いの話など、様々な話をしていた。時間は三時頃であった。
「オメテオトルさん、あなたはなぜこんな所に?」
「私は、今あの街に滞在していまして。帰る所だったのです」
彼はそう言って、緩い下り坂の方を指差した。
「シエル・ロア…?わたし、こんな所を歩いていたんだ…」
「おや。貴女は帰ってきた訳ではないのですか?」
セシルは頷きながら答えた。
「お姉様の事を考えていたら、いつの間にかこんなところに居て」
「軍にいらっしゃる方、でしたね。街を歩いていると良く見かけます」
セシルは、姉が無事に暮らしているということを知って、安堵した。だが心の寂しさは消え失せはしなかった。
「お姉様に会いたいんです。会って、話がしたいんです」
彼女はうつむいて言った。彼はいきなりこんな話を切り出してきた。
「貴女は…”エデンの鍵”というゲームを知っていますか?」
「いや、まったく…」
「運営が企画した三つの組織によるゲームで、優勝した組織にはあの街の統治権が手に入るゲームです。参加したい、とは思いませんか?」
「……。」
いきなり切り出された話に、彼女は黙った。
「参加しないのであれば、参加しなくても良いと思いますが、このゲームに運営として参加すればきっと姉に会えるでしょう」
姉に会える。彼女の目は輝いた。
「オメテオトルさん、わたし…”ゲーム”に参加する。運営に入ってお姉様に会えるのなら——」
彼女の言葉に迷いはなかった。
「決まりですね。もう夕方なので、途中まで送っていきましょう。街道とはいえ、まだまだ危険ですからね」
「大丈夫です。わたしは旅人ですから」
彼女はそう言ってオメテオトルと別れた。






空は夕暮れ。姉に会えるという思いだけが彼女の足を動かす。
姉に会えるなら、たとえ姉と剣を交える事になっても——。と思いながら、彼女は街へと歩き出していった。

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銃で穿つ【一回戦】

2012/04/29

「リスを捕まえる…?簡単だな。こりゃすぐに終わるかもしれねえな」


住宅街のとある借家。部屋。
チノはベッドの上に仰向けになり、携帯を見ながらそう呟いた。
黄の腕章には”運営”から貰った星が一つ、輝く。
「小動物ってのは大抵こんな時間は闇にまぎれてるもんだが、この星がついてるなら多少は見つけやすいか」
携帯を捉えていた目が、腕章の星を捉える。星には自分の名前が彫ってある。
星というものは闇の中でこそ輝きを増すもの——。というのが彼の考えの一つであった。
彼は時計を見た。この時間であれば他組織の人も少ないだろうと彼は思った。
「さ…てと、リス、捕まえないとな」
彼はベッドから起き上がった。
「星を貪欲に求めて、醜い勝利が何なのか、オレがこの目で確かめてみるか」
彼は銃を手にし、ホルダーにしまう。そして、借家を出た。


「今日は地下から…と」
チノは隠し通路から地下の水路に入っていく。
地下へ通じる隠し通路を、彼はあらかた知っている。幼少期の生活において、地下に隠れ潜む事は日常茶飯事だったからだ。
それに加え使われていない水路や、不気味な水路、様々な事情があり、今ではこの通路を利用する者は居ない。
チノは水路を走っていった。時々足を止めて、水音や足音に耳を澄ませる。
そして走って走って、数時間——リスはいまだ見つからない。
チノは通路に座り、体を休ませる。地下に入ってから今までチノは、誰にも遭遇していなかった。
チノは周りを見回した。いつの間にやら不気味な水路の近くまで来ていたようだ。
「こうして眺めると不気味な水路だな…だけどあそこにリスが迷い込んでるかもしれない」
彼は気持ちを奮い立たせ、不気味な雰囲気のする方へ向かっていった。


水路をどんどん進んでいく。進む度に彼の感覚は研ぎ澄まされていく。
階段を上り、通路を通っていくと、彼の耳にバシャバシャと微かな音が聞こえた。
「魔物か…?」
彼は水音のする方へ駆けていく。だんだんと水音は激しくなっていく。
彼は大きな所に出た。するとそこにはお目当てのリス———そして…ゼリー状の魔物。
「あぁ——こりゃ星が欲しけりゃ魔物を倒せって言う運営の計らいかも…なぁ!」
彼は咄嗟に銃を構え、魔物めがけて撃った。


水路に銃声が鳴り響く。
魔物と銃の相性は悪かった。
「ったく、弾が切れる!」
銃弾を装填しようとするが、魔物が襲いかかってくる。チノはすかさず蹴りを入れた。研ぎ澄まされた蹴りが魔物を裂く。
「しつっ…こい魔物だな!」
彼は右に持つ銃で魔物を振り払う。銃は刃のように魔物を裂いた。
銃弾を銃に装填し終えた。ポケットの中の銃弾は少ない。
「これでやってやる…」
少しでもダメージを、少しでも威力の高さを。
チノは魔物との間合いを詰める。至近距離での射撃、距離が近づく程威力は高まる。
ゼリーに銃口が当たった。零距離射撃。
「行けぇっ!」
チノは全弾を魔物に撃ち込んだ。ゼリーが弾け飛び、少し顔に掛かる。魔物は跡形も無く散った。
「魔物は倒した。あとはリスを見つけるだけ——」
そう呟きながら顔を拭う。ゼリーの臭い匂いが鼻をつく。
リスは簡単に見つかった。彼はリスの星を取り、リスに語りかけた。
「キミはもう地下に入るんじゃないよ。オレが森に帰してやるから、な」
腕章に星を付け、チノとリスは帰路についた。

地上へ出ると、星の輝く夜は過ぎ、代わりに朝焼けの太陽が、さんさんと輝いていた。




チノ…星取得

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袋【第一回戦】

2012/04/29

ある日の昼下がり、軍本部の廊下——。
大きな袋を抱えた長身の女性が歩いていた。
その姿は人の目を引いた。むしろ、一目を引かない方がおかしいというものであった。
「ユリスちゃん、何を抱えているんだい?」
長身の女性——ユリスは呼び止められ、後ろを振り向く。そこには長身の男性が立っていた。
「あぁ、水翁さん。これはリスの餌ですよ。ついつい大量に買ってきてしまって…」
「僕が持ってあげようか?」
「少しだけお願いします。4分の1ぐらいで結構ですから」
水翁が少し餌を持つ。
「この荷物、どこまで持っていけばいいのかな?」
「軍の寮の私の部屋までお願いします」
ユリスは水翁と一緒に部屋へと歩みを進めていった。



「これ、なんでそんなに使うんだい?」
「リスは毎日追いかけられてお腹を空かせているでしょうから、餌を撒いて捕まえる事にしました。それにここは軍の敷地内ですし、入って来れる者は居ないかと…」
あれやこれやと話をしている間に、ユリスの部屋が見えてきた。
「一応部屋の中に置いておくから、また何か収穫があったら言ってね」
「分かりました。水翁さん、今日はありがとうございます」
「大丈夫だよ。それじゃあ僕はこれで」
ドアを閉める音。ユリスはほっと胸をなで下ろした。部屋には大量の餌。
「この餌、皆にお裾分けしようか…」
彼女は大袋を開けた。中からは大量の餌の小袋。
「仕事をしながらこの餌をどうするか考えなければ…」
そう呟き、彼女は机の上の仕事に取りかかった。



夕方、ユリスは大量の餌を軍の上司や部下に配り、餌を半分捌いた。
餌が大量に入っている大袋は、かなり量が減っていた。
「残り半分の餌…どうしようか…」
彼女は考え始めた。大量の餌を買う必要は無かったのではと。
残り半分の餌。どこに撒くのが良いのか——。しばらく苦悩した後、一つの結論にたどり着いた。

彼女は小袋の餌の封を切り、大袋に中身をあけていった。無意識に袋の封を切って——中身をあけ——を繰り返した。
暫く繰り返し、全ての餌を大袋に入れた。
「問題はどこに撒くか…」
大量の小袋が散乱し、大袋は質量を増していた。
彼女は窓を開け、大袋を机の上まで運んでいった。そして窓から外へ出た。草を踏む音とその感触を感じる。
「よいしょ…」
袋を持ち上げ、周りに大量の餌をばらまいていく。縦横無尽に餌を撒いていく。
窓の前も撒いて、全ての餌を撒ききった。彼女は部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。
「これで…リスが餌を食べて…くれると…」
彼女はそのまま、深い眠りについた。





次の朝、起きて窓を開けると彼女の思惑通りにリスは餌をついばんでいた。
しかも星の付いているリスが。
彼女は星を一つ丁寧に取り、腕章に付けた。
「いただきます」
彼女はそう言って、リスを撫でた。




ユリス…星取得

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