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In order to acquire The key of Eden in that hand

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幸と不幸と【第二回戦・個人戦】

2012/05/11 21:47

チノが人間競馬をするお話。

朱緒さん宅の藤堂錦さんと美月さん宅のワーブラ君をお借りしました。
ちょっと長いので追記からどうぞ…。

追記編集する可能性があります。
※微修正追記しました。












――ここ…オレには縁遠そうな場所だな…。
チノは高い建物を見据えて思った。
視線の先には、”シュヘンズレヒター・グランドホテル”という名のホテル。
第二回戦の内容はカジノでの賭けであり、会場はこのホテルの47階から50階。
肌に纏わり付くタキシードに、チノは大いに違和感を感じていた。
何せ数ヶ月前でなく――数年程前に着たものを引っ張りだしてきた。
礼装はこんなに窮屈なものだったのか――と思いながら、彼はホテルへと歩みを進めた。



エレベーターは上昇を続ける。エレベーターの中は誰か居ないにも関わらず、狭くないにも関わらず、窮屈に感じられた。
3階―–16――――、45――46―。
エレベーターが上昇していくにつれて、彼は礼服を緩めてしまいたい衝動に駆られてしまったが、彼の良心が働いて踏み止まった。
47階でエレベーターは停止した。ドアが開く。人の喧騒が聞こえる。
もっと息の詰まるような何かを連想していた彼は、ここでようやく肩の力を抜いた。
腕に巻いた腕章を見せ、まばゆく光る銀の星を貰う。数を数えるといち、に、さん…十個。
金の星より銀の星の方が綺麗であって――輝きだけではモノやヒトの美しさをはかる事はできやしない――。彼は星を見てそう思った。
階段を指され、階段を登って会場へ行く事を命じられたので、チノはそれに従い階段を一歩一歩登っていった。
だんだんと歓声、喧騒、野次が大きくなっていく。
最後の一段をのぼり終え、カジノフロアに足を踏み入れた時、そこには吹き抜けが広がっていた。
異世界が広がり、人が広がり、音が広がる――。
チノの賭け好きと女性の姿も相まって、彼の目は、しおれた花が水を与えられたかのように輝き始めた。






”賭けは見定めが肝心”――昔に聞いたことのある言葉を思い出しながらカジノ内を歩く。
賭け好きとは言ったものの、彼は裏表で勝負が決まったり、出目で勝負の決まるような簡単な賭けしかしたことがない。
賭けをする理由は半分以上が交渉。自分の利益の為に賭けをする事はあまり無かった。
チノは複雑な賭けのルールを分からなかった、いや、知らなかった、極端に言えば知る必要が無かったのである。


そして暫く歩いている途中に、スロットを見つけた。
これなら出来るかもしれない。そう思って彼はスロットの並ぶ所へ歩いていった。
だがスロットが多い。当たりの台はどこかにある筈だが、どこから手をつけてよいのか分からない。
”直感を信じろ”という言葉がふと、頭に浮かんだので彼は適当に台を選んで座った。
銀の星をスロットに入れてレバーを引く。賑やかな音とともに、スロットが勢い良く回りだす。
最初は少なめに入れて様子を見る――彼はスロットのリールを止めた。

柄が揃う。銀の星がさっき入れた数より多く出てきた。
今度は星を増やして投入する。こうすることによってどこかの列で柄が揃えば星が出てくるようになった。
スロットが回る。柄が揃う。星が出る。
スロットが回る。柄が揃う。星が出る。
スロットが回る。柄は揃わない。星は出ない。
スロットが回る。柄が揃う。星が―――。


スロットが回って星が出る――出ない――というのがあり、手元には30個程の銀の星があった。
こんなに星が出た回数が多いなら、もっと星の山になっていた筈だが、揃った柄の倍率が低かったので彼は飽きてしまった。
「これがビギナーズラックってやつかな」
彼はそう呟き、このままでは持て余しそうな程の銀の星を、金の星に交換してもらう事にした。





チノの腕章にまた一つ星が増えた。
美しく輝く銀の星ではなく、豪華に輝く金の星。
いつしか疲れた彼は、吸い寄せられるかのようにチェアーへと向かっていった。

チェアーへ座り、モニターを眺める。耳に聞こえるのは歓声と野次。
無心でぼやっとモニターを眺めていると、人と人とが剣を交えていた。小気味好い刃の音と、実況らしきものが聞こえる。
しばらくぼーっとモニターを眺めていると、ハッキリとした女性らしき声が聞こえてきた。
「おい、そこのてめえ、暇そうな顔してんなァ?」
ぱっと後ろを振り向く。そこには腰に手を当てている、ドレス姿の短髪の女性が、歯茎を見せて立っていた。
「暇そうな顔ねえ……もしかして、オレの事?」
「あぁ、そうに決まってんだろォ?それ以外に誰が居るッてんだァ?」
チノは彼女の言動に驚いた。男らしい女の子も世界を探せば居るものなのか、と。
「そういうキミも、いかにも戦い足りない、って顔してるな。オレはチノだ」
「良くわかったなァ……チノ。俺は藤堂 錦だァ。今の俺は戦い足りねェンだ。どうだァ、ちょうど腕章の色もちげぇし、俺と今戦ってみねえかァ?」
錦は言った。モニターに写ってる場所で戦おうという事か。彼はこれ以上ここでぼんやりしている訳にもいかないので、こう言った。
「女の子に誘われちまったら断らないっていうのがオレのモットーだ。オレでいいなら戦おう」
今思えば少し不運だったのかもしれない。もしかしたら、ビギナーズラックに飽きた彼にはちょうど良い薬だったのかもしれない。
「じゃあ俺は適当に暇そうにやってる審判取っ捕まえてくるからよォ。てめえは先に待ってろよォ」
そう言って彼女は審判を探して駆けていった。
「さて、と。オレも準備するか…な」
彼も呟いて戦いの場へと赴いた。





ゴーグルをかけて、銃の手入れをする。
彼の愛銃は相棒と呼べる程使い込んでいるにも関わらず、まるで新しい銃のように見えた。
銃を装填し、銃弾をすぐに装填出来るように準備する。
相手は女性だが、気性が荒い性格なのでいつ殺しにかかるか分からない――
彼はそう思いつつ出撃準備を進める。

準備は終わった。あとは彼女と審判を待つのみ。



しばらくして、彼女の姿が見えた。ゴーグルの視界が彼女を捉えた。
”獣化 6時間に一度きり
    体の一部を獣化するのではなく、全身が獣の姿になる。”

「獣の様に獰猛な感じだったのはそのせい、か」
チノはゴーグルを頭の上にやりながら、そう呟いた。
耳を澄ませば、人々の歓声や賭けの相談が聞こえる。


「チノォ!審判見つけてきたぜェ!ワーブラってえ野郎をなァ」
見ると、錦に半ば引っ張られるような形で、ワーブラという碧髪緑眼の男が連れられていた。
「見つかったんだな錦!」
「何だか話聞いてるとよォ、平等に審判やってくれそうだったんだよなァ!」
彼女はどこか嬉しそうな顔をしていた。本当に戦いを求めていたのか。戦い足りなかったのか。
「あんたは早く場所についてくれ。ところで、金と銀、どっちの星を賭けるんだ?」
「星を賭ける、だァ?そりゃァ金の星一つに決まってんだろォ!……なぁチノ?」
本当は銀の星を賭けたかったのだが、彼女の気に負け、金の星を一つ賭けることにした。
「これでゲームの準備は整った。他の観客の賭けも終わった。試合はオレが公平にジャッジする、いいな?」
ワーブラが言った。発言通り、戦いの準備は整った。チノと錦が戦場へ入る。向かい合う二人、聞こえる歓声。

「今日の俺は本気だぜェ?」
「それなら、オレも本気出さないと、な」
チノが銃を構える。錦は不敵な笑みを浮かべる。


「試合開始!」

ワーブラの声がこだました。
戦いは始まった。




「一気に決めちまうぜェッ!」
試合が始まって早々、錦の体が獣へと変わっていく。
服が地面に落ち、彼女の体は黒く大きくなっていく。
「いきなり異能かよッ!?」
いきなり異能を使うとは――。彼女が最初から全力で戦うということを、彼は即座に理解した。
いつしか彼女の体は、人間と呼ぶことの出来ない獣そのものになっていた。

獣がうなり彼の方へ駆けていく。
チノも駆けながら銃を乱射する。
距離を詰められたらまず勝ち目はない。距離をおいて弱った所に叩き込む。
どこまで獣相手にやれるか、それとも早々に決着がついてしまうのか――。
彼は銃弾を撃ち込んでいく。しかし、銃弾は錦をかすめて行く。
獣は牙を剥いて爪で切り裂こうと距離を詰める。
「ったく…ちょこまかちょこまかッ…!少しはおとなしくッ…!」
その時彼は、一弾一弾を冷静に当てようとしていた。だが獣は狙いを定めてはくれない。
「ンなもンよォ、おとなしくしてェられッかよォオ!!」
獣の爪が迫る。彼はそれを右の銃で受け流しはねのける。
彼と獣の距離はかなり詰められていた。獣の俊敏な動きが緩む。多分銃で爪を受け流して驚いたのだろう。
今だ――。彼は左の銃で獣めがけて撃った。血が多少散り、チノの顔に掛かる。
「やっと捉えれた」
のけぞる獣に右の銃を振り下ろして追撃した。呻く。
「グルル………。ッ痛えェ…てめェ…」
ヒットアンドアウェイ。獣は血をぽたぽた流していた。目はじとりとチノを見据えていた。
「……怒らせちまったかな…」
うなり声はさらに気迫を増した。完全に怒らせてしまったようだ。
迫り来る黒。振り下ろされる爪。彼はそれを間一髪で避けた。蹴りを入れようとしたのだが獣よりも小回りが利かず、獣のタックルをもろに受けてしまった。
「うッ……ぐ…!」
彼の体が吹き飛んで転がる。腹に感じる鈍い痛み。口の端が切れ、少し眩暈がしたが、すぐに起き上がり反撃の機会を伺う。
視界が少しぼやける。このままではまずい。口の端を拭う。
威力の高い弾を装填し、銃を構えて、反撃を待つ。
獣も疲労を隠せない。チノもさきほどの一撃でかなり体力を持っていかれた。
牙や爪を躱すうちに眩暈が収まってくる。決めるなら最後――。
そう思い銃を撃とうとしたその瞬間、疲労による反応の鈍さか―、女性に対する躊躇か―、彼の指は動かなかった。
「何ィやってンだよォ!?そンなンじゃあ——」
迫り来る黒。彼は動けず。
避けようとした次の瞬間、彼は思い切り突進を受けた。
彼は再度吹き飛んだ。今度は壁に頭を強く打ち付ける。そばには錦が着ていたドレス。
「ッがぁッ…!痛ッ…!ぐッ……」
息が一瞬止まる。脳内には妖精が見える。額から生温いものが流れる。
彼は呻く。視界がどんどん暗くなっていく。トイカメラのトンネル効果さながらに。
このまま気を失ったらどうなるんだろうか。殺されてしまうのか。
なんとか気を保とうとする。爪に引っ掻かれる。牙が刺さる。
「あぐッ……!…ぅあぁ゛…!」
意識を保てる訳が無い――。光がだんだん細くなっていく―――。鈍い痛みに鋭い痛みが混ざり、彼の意識は少し暗くなった――。




「う…ぅッ…」
痛み。意識が明るくなった。大きな声、肌にまとわる水気――と熱。
「…勝者は――――――。――――藤堂錦……。チノ―――戦闘続行不可能により、勝者は…」
ワーブラの声が勝者を告げている。気絶してからの時間はそんなに立っていないようだ。
「あぁ、オレ…負けたのか――」
力なく呟く。目をゆっくり開ける。目を開けた瞬間、意識の光が消えかけの蝋燭のようになった。
彼はいつの間にか錦の下敷きになっていた。それに加え姿は全裸。
彼女も気を失っている。異能を使いすぎたからか。彼は這い出る。
「何で裸で………待てよ……確かこれって中継されてるはずだよな………」
彼の手は無意識にタキシードの上着を引っ張っていた。
このままではモニターというモニターに裸の女性が写り続けてしまう。
「痛ッ…!」
鈍くて鋭い痛みが襲ったが、裸を曝される女性の心の痛み等に比べれば彼にはまだマシな痛みに思えた。
外の声が聞こえる。下衆な声も聞こえた。
タキシードには穴があいていて血が付いていたが、彼女の体を隠すには十分だった。
彼はタキシードで彼女の体を包み、そばにあったドレスを彼女のそばへと引き寄せた。
これで心配する事はない――。後は誰かがどうにかしてくれる――。二人とも死ぬ事は無いだろう――。
彼は血みどろのブラウスに視線を落とし微笑む。腕章の星を一つ外し、地面に置く。その星には”Chino”と彫られていた。
「錦とは……いい…友人に…なれそうな…………」
彼は呟いた。いい戦いをした――。そう思い、意識は再び暗くなっていった。










人間競馬 チノvs藤堂錦  勝者:藤堂錦

銀星の個数(現在):10   金星の数(現在):2
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