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肉を喰らう【プロローグ】

2012/04/18 22:15

人々の話し声でにぎわい、耳を澄ませば豪快な笑い声や様々な声が耳に入ってくる。
外からは食べ物の良いにおいと、暖かい電灯。それだけでなぜか立ち寄りたくなる――そんな雰囲気を醸し出している。
そこはギルドが運営している、一般市民にも開放されている食堂である。
その食堂の中のカウンター席に、一人座っている赤毛の青年が居た。



「フォル、ステーキと、サラダ一つずつ食べたいんだけど、大丈夫かな?」
青年はいつもより寂しく水色の髪をした少女に話しかけた。
「あっ、チノさん…その…今作ります!」
チノ――と呼ばれた青年の声に、フォルと呼ばれた少女は急いで調理を進める。
「フォル、あんまり急がなくていいよ。キミさ、さっきも焦って料理がヤバいことになったろ」
その事実を示すかのように、一つのフライパンの中に、黒い物体がぶすぶすとくすぶっていた。
「あのっ、それは私がタイマーの設定を間違えたからで…その…本当にっ…ごめんなさい!」
「オレに謝る必要なんてないって。ほら、サラダにいっぱいドレッシング掛かってる」
カウンターテーブルには、これでもかとあらゆる類の調味料を掛けたサラダが出されていた。
「わわっ、ごめんなさいぃっ!!!」
フェリクは我に返って調味料ジャンキー御用達のサラダを見て、謝った。
「いいって、いいって。オレはそんなに気にしてないから大丈夫だよ。フォルが悲しい顔をしてると、オレまで悲しくなっちまう。だから明るく、な?」
チノはサラダに手を伸ばす。口にしたとたんに、調味料達が味の主張をし合う。チノは不味いというよりもむしろ美味しそうな顔をしてしばらく調味料を口にし続けた。
「あっ、で…でもステーキは…その、おいしくできましたよ!」
テーブルに出されたのはステーキ。肉汁のしたたる、ミディアムレアに仕上がっていた。チノはそれを見るや、ナイフで肉をざっくりと切った。そして切った肉を、豪快に食べる。
「その…料理、おいしいですか?」
フェリクは訊いた。チノは肉を飲み込み、こう言った。
「もちろん。もう食べちまったよ。ごちそうさま」
チノは口をナプキンで拭いながら言った。テーブルには食後のお茶が置かれていた。フェリクの計らい、だろうか。




チノはお茶を飲み、食事代を払うコインを用意しようと右ポケットを探った――。
のだが、ポケットの中にはサイコロと少しの飴しか入っていなかった。念のため左ポケットも探ったが、そこには冷たい鉛――大量の弾丸が入っていた。
どうしようかと思案するついでに銃の手入れをする。今日は銃を使っていないのだが、念には念を入れて手入れをした。だがコインが出てくる筈もなく、ゴーグルを装着した――が、そこに出るのは異能の情報ばかり。にぎやかで人の多い場所だったので、すぐにゴーグルが曇ってしまった。
「はー…どうするかなぁ…オレ」
チノはぼそりと呟いた。
「あぁ…そうだった、今日の分のコインはあの子に全部使ったんだった……」
ふと今日に奢った女性の事を思い出した。チノの顔が寂しくなって下を向く。
「あの…チノさん?今日は…その、ツケで大丈夫ですよ?」
フェリクの言葉に驚いた。まさかさっきの呟きが聞こえていたのか、とチノは思った。
「え…フォル、いいのか?」
チノは言った。
「いっ…いいんです!そのかわり、次来た時は、まっ、まとめて払ってくださいね」
「ああ、わかったフォル。ありがとな」
彼はそう言って、外へ出るドアを開けた。




チノは食堂の外へ出た。外は暗く、星が少し見えた。
彼はふと携帯電話を覗く。新着メッセージが一件、届いていた。
「こんな時間にメール?誰なんだ…?」
メッセージを見る。見知らぬメールアドレスに、”ゲーム参加おめでとう”という文字が浮き出た。新手の詐欺かと思ったが、本文を見るとどうやら詐欺ではないようだった。
「ゲーム…ピアチェ………エデンの…鍵……? …なんだこのメール、詐欺にしか見えない…な」
彼はそう思った。が、彼にはそのメッセージを消す事が出来なかった。
「もし詐欺じゃなかったら、どうしようもねえよなぁ…それに、ゲームには勝たねえとな」
彼は携帯をしまい、飴を口に放り込む。
「それにしても、『醜く勝利に執着する様』……か、人間って、大抵そんなもんだと思うけどな…」
そうして彼は、夜の街をまた歩き出すのだった。



チノ君のプロローグ。
まだキャラ設定の記事が出来ていないのに、という突貫ぶり。

ギルド・食堂のインフェリクサ・フォルトゥーナ(フェリク)を御借りしました。
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